2019年11月にオペラ「椿姫」を観て来ました!個人的に初オペラで、色々どれを観るか迷ったのですが、一緒に行った兄夫婦のリクエストもあり、新国立劇場で観て来ました!第一印象は「やっぱりマンパワーは、凄い!!!」という事。1人の人間の声でこんなにも沢山の人を魅了できるのかと驚きと新鮮さとですごく勉強になりました。これは生だからこその緊張感や空気感もあるなぁ〜。
舞台装置が思ったよりすごくシンプルで、その分歌や音楽としての面白さ、演技力に集中できた気がします。他のオペラも俄然観たくなりましたよ!
そして初オペラという事もあり、オペラを観る前に、少し予備知識がある方が楽しいかと思い、映画を観たり、原作を読んだりしてみましたので、備忘録含めてブログにまとめてみました!
※あくまで個人的感想で、ネタバレもあると思います。ご注意ください。
ヴェルディのオペラとアレクサンドル・デュマ・フィスの小説
小説が元になり、オペラが作られた訳ですが、この二つは結構違っている所が多いのです。
日本では単に椿姫と呼ばれる事が多いようですが、まず、原題が違う。そして登場人物の名前が違う。そしてなんとなく印象も違う!
ヴェルディのオペラ「椿姫」の原題は「La traviata」道を踏み外した女という意味。アレクサンドル・デュマ・フィスが書いた小説の原題は「La Dame aux camélias」椿を持つ女性という意味。
役名は
マルグリット・ゴーティエがヴィオレッタ
アルマン・デュヴァルがアルフレッド
などなど、全て異なります。
また、友人関係やアルマンの父親の描写が結構違っていますので、それぞれ印象も違いますが、大筋としては純愛ストーリーです笑
ものすごーく簡単なあらすじ
パリに高級娼婦マルグリット・ゴーティエ(オペラではヴィオレッタ)という美しい女性がおりました。彼女は病気でしたが、華やかな社交界の花として君臨しておりました。
そのマルグリット(ヴィオレッタ)に恋したのが田舎から出てきた詩人の青年アルマン(アルフレッド)。彼の純粋な愛情で、マルグリット(ヴィオレッタ)はパリの生活を捨て田舎暮らしを始めます。そこへアルマン(アルフレッド)の父親がやってきて、息子と別れてほしいと頼みます。元娼婦と息子の関係がバレると妹の結婚に差し支えがある、そして将来有望な息子の為にもどうぞ別れてくれと言ってマルグリット(ヴィオレッタ)を説き伏せます。
愛故にマルグリット(ヴィオレッタ)は別れる事を決意。パリへ戻ります。
父とマルグリット(ヴィオレッタ)の密約を知らないアルマン(アルフレッド)はマルグリット(ヴィオレッタ)が自分を捨ててパリに戻ったと勘違いして嫉妬します。
結局喧嘩別れしてしまい、マルグリット(ヴィオレッタ)は病床につきます。
死ぬ間際にアルマン(アルフレッド)と再会できるのがオペラ。原作の小説は再会できず、彼女の遺品の競売や、お墓のエピソードなどがあります。
小説「椿姫」
原作はマルグリットの遺品の競売から始まります。一冊の本にアルマンの名前があり、その本を競り落した作者(デュマ本人)とアルマンが出会い、マルグリットの事をアルマンが回想する形で進みます。個人的にはこの出だしが面白く、アルマンの回想に入ってからは、アルマンの惚気や嫉妬に少しうんざりしました笑
小説でのアルマンの印象は完全にストーカーです笑 かなり嫉妬深く、子供じみています。
デュマの実体験が元になっている事もあり、1番人間描写が濃い小説は、これはこれで面白いと思いました。作者デュマ24歳。父も著名な作家であり、20歳まで父の金で遊びまくってたようですが、この椿姫で大ヒット。代表作となったそうです。若いな!
オペラ「椿姫」
かの有名なジュゼッペ・ヴェルディが1853年に発表したオペラ。 1852年、パリに滞在したヴェルディはデュマ・フィスの戯曲版『椿姫』の上演を見て感激し、なんとイル・トロヴァトーレという他のオペラと同時進行で制作、一年間で仕上げてしまっています!ヴェルディさんは当時油のりまくってる40歳。働き盛りなのは分かるけど、凄すぎやしませんか?!
しかし、トロヴァトーレは成功したものの、椿姫の初演の方は失敗だったとか。理由は完成から公開までの期間が短くみんな練習不足だったからといいますが、その他の理由のひとつに、主人公のヴィオレッタが、病気で死んでしまう役なのに太りすぎていたことだというから面白いですね!今観てても、確かに太ってたら成人病とかで死んだのかなって思いますもんね〜。なんかイメージとちがーう。
今回新国立劇場で見たヴィオレッタ役の方は細身でかなりイメージにピッタリだったのでとても想像しやすかったですね!
ヴェルディさんの女性関係
ヴェルディのオペラの原題は『堕落した女(直訳は「道を踏み外した女」)』を意味するLa traviata(ラ・トラヴィアータ)。
なんでこんなタイトルにしたの?って思いません?元々は椿を持つ女性でしょ?
実はヴェルディはこの作品を自分の妻と重ね合わせていたのではないかと言われているそうですよ。
以下「オペラディーヴァ」さんから引用
ヴェルディの妻ジュゼッピーナ・ストレッポーニはイタリアのスカラ座のプリマドンナでした。ジュゼッピーナは、恋の噂も絶えなかったようで、私生児を3人産んでいます。恋多き女性と言うことですね。今なら週刊誌ネタがたくさんあったのでしょう。そんな生活が影響したのか、歌い方に問題があったのかはわかりませんが、とにかくジュゼッピーナの歌手としての寿命は短かく、その後は、ヴェルディの妻として彼の作品の創作に生涯協力していくことになります。
ところが妻のジュゼッピーナは、ヴェルディの故郷ブッセートという街では、人々の反発が強く、ブッセートを離れて農園のある田舎暮らしをすることになります。華やかな生活を捨てて、田舎暮らしをするところは、椿姫と共通していますね。ヴェルディの最初の妻はブッセートの娘で、病気で亡くなっているのですが、ヴェルディは若いころから義父に経済的支援もしてもらっていたんですね。だから街の人はジュゼッピーナに冷たかったわけです。新しい妻は恋多き女性で、しかも私生児を3人も産んでいるということで、街の人々の目は厳しかったのです。その後結局二人は引っ越しすることになるわけです。
現代でもありそうな話で、時代が違い、大作曲家とはいえ、こういうことはあったんだなと思います。と言うより、結構多いというか、プッチーニなども女性問題を起こしていますしね。ジュゼッピーナは高級娼婦ではありませんが、でも椿姫の主人公となんとなく似ていますね。
でも、妻に対して道を踏み外した女ってちょっと言い過ぎかなと思ったのかもしれません。オペラ版のヴィオレッタはかなり善人に描かれているのはそのせいかもしれないですね。
今回見たオペラ『椿姫』
勝手に想像、解釈。個人的な感想色々。
今回見た椿姫のキャストなどはこちらを参考に。
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/latraviata/
主演のヴィオレッタ役、ミルト・パパタナシュさんはヴィオレッタがハマり役と言われるだけあるのか、初めて観た私でも役柄にピッタリで演技力も歌唱力も素晴らしいと感じました。初心者なので分からないけど!
(ヴィオレッタ )ミルト・パパタナシュ
オペラではラストシーンがかなり宗教的に描かれているような気がしました。
「不思議ね。新しい力が湧いてくるようだわ。私、もう一度生きるのね!」と言って終わりました。
これはなんだか、道を外した女でも、悔い改めれば神は受け入れてくれ、死後天国へ行けるというような雰囲気がありました。
また、病床のヴィオレッタが貧しい人に寄付をするシーンもあります。
これは当時の検閲をかいくぐるためもあったのでは?と思われます。
個人的にはちょっとヴィオレッタが原作より善人に描かれすぎかなーと思いました。
文字もあまり書けない、教養をつけることのできなかった生い立ちなどをあまり感じません。
また、アルフレッドが嫉妬してヴィオレッタに札束を投げつけるシーンでは、レディに対してあるまじき行為として、社交界がアルフレッドに冷たくなる様子や、社交界はヴィオレッタの味方だというような描かれ方がされていて、ヴィオレッタの孤独感が弱いです。
しかもアルフレッドの父まで出てきて、お前何しとんねん的に、息子がヴィオレッタにした行為を責めます。要はかなりアルフレッドがダメ息子に描かれ、社交界からハブられます。
個人的に好きなシーンはヴィオレッタからの手紙を嫌な予感がすると言いながらも開いた時のアルフレッドの反応のシーン。
そんなに驚かなくても!と思わず突っ込みたくなる笑
だって嫌な予感してたんでしょー?でもそれだけショックだったという演技なんでしょうね。オケもガーン!って雰囲気がとても出てて、なんか好きです。
そしてラストシーンでヴィオレッタがアルフレッドに白椿を渡すシーン。
舞台装置がとても良い感じで、薄く透ける黒幕の手前にヴィオレッタが倒れており、奥にアルフレッド達(女中のアンニーナ、医者、アルフレッドの父ジェルモンも最後には登場)がいるのですが、それがこの世とあの世を隔てている薄い幕のような演出でいい感じなのです。
その幕があるのでアルフレッドは白椿に触れられない。頑張って力を振り絞って白椿を渡そうとするヴィオレッタ。届きそうで、届かない。焦ったい。意外と死なないヴィオレッタ。このシーンも好きでしたね〜。
撮影ができなかったのですが、ヴィオレッタの衣装も素晴らしかったです。
最初は華やかなパリに咲く花をイメージできる赤紫と黄緑と黒の妖艶な雰囲気のドレス。
これは展示されていたので雰囲気は分かるかと!
田舎の生活では薄紫の清楚に見えるドレス。
アルフレッドを置いてパリに出た時は喪服のような黒いドレス。
病床では身体のラインが見えるベージュに黒いオーガンジーが重なったドレス。裸足だし、身体のラインが見える事でさらに線が細く見え、病気がちに見えるから不思議。
※キャストは私が見た人とは違う人です
公開年度は違うのですがこのサイトが衣装は分かりやすく出てました。
舞台美術もシンプルですが美しかった。抽象度が高く、客に想像させる舞台だったなぁ。小道具的なピアノが色んな役者の関わり方で変幻自在の存在になり、とても面白かった!
キャストはジェルモン役の方もすごく声がよく聞こえてよかったです!
アルマン役の人は急遽出演だった事もあるのか、少し物足りなく感じました。映画のアルマンがカッコ良すぎたから、小太りなおぼっちゃんに感じてしまった笑
実際に座った座席。オペラグラスなど。
私が座ったのは4階席の舞台向かって左側。1番前の席。背が低いので前に人がいたら見えないかも、と1番前の席をとりました。これは正解!手摺りが多少邪魔ですが、ほぼストレスフリーに見れました!音も結構良いのでは?見えない角度も無し!
字幕って舞台の左右に出るのね。知らなかったわ。液晶で縦書きの字幕が出ます。
4階ですのでオペラグラスはあった方が良いですね!私は双眼鏡持っていきましたが、兄夫婦は1000円でハイテクオペラグラスをレンタルしてました。
当日会場で借りれます。一度焦点を合わせると自動でピント合わせしてくれる眼鏡タイプのオペラグラスとか。他に普通のオペラグラス500円もあるらしい。目線はかなり見下げになるので、双眼鏡で見てても表情はそれなりになります。今度は一階か二階くらいで役者の目線で見てみたいなぁ。
映画「椿姫」
私が観たのは1936年に製作・公開されたグレタ・ガルボ主演のアメリカの映画。
映画ではグレタガルボ演じるマルグリット・ゴーティエがパリ社交界で孤独な高級娼婦である事がよく伝わる内容になっていました。
そしてアルマンが結構イケメン。アルマンの父親はちょっとしか出て来ません。オペラでは結構大事な役だと感じるのですが、映画ではただの頑固親父に感じました笑
映画では同じ高級娼婦仲間兼ライバルとしてオランプという女性が出てきます。小説ではそれなりに美しい女性な描写ですが、映画ではかなり下品に描かれてますね。服とかケバケバでダサいし。
また、プリュダンスという中年女性でマルグリットの世話役と思い込んでいる女性も出てきます。彼女はマルグリットを世話しているようで結局は金蔓的に思っている節があるという描かれ方です。
なので映画ではかなりマルグリットの孤独感を感じます。華やかな生活とは言っても、真実の愛はない所へのアルマンという描かれ方ですね。
簡単にストーリーを把握するには良いのではないでしょうか!
オマケ。オペラの音源を聴きながらセリフを追いかけてみた
この本でちょっとだけお勉強しました。最初は何言ってるか分からないのでセリフを追いかけるのも必死。発音難しいし、歌になってるからすごく長ーくなってたり、短くポンポン進んだりで、すぐに「え、今どこ?」とセリフを見失いました。わからない授業についていけないように、段々とついていけなくなると最高に眠くなる…。
しかーし!
朦朧とした意識の中でも、ストーリーと曲がマッチしている事はわかる!
華やかなシーンでは華やかに、心乱されるシーンでは心乱れた!って曲になってますね。心理描写と音楽のマッチングは映画のよう。当たり前かもしれないけど、それが分かるだけでも本番楽しめる気がします!
実際、ストーリーが頭に入っていたし、聞き覚えのあるフレーズが多くなると、字幕を追わなくてもいいので歌や演技、音楽に集中できました。
なんで椿?
椿な理由はわかりませんが、マルグリットが自分の体調(生理週間)に合わせて、体調の良い日は白椿を、悪い日は赤椿を、身につけたり、桟敷席に置く事で、本業の高級娼婦のお客様にさりげなくお知らせしていたんだとか。
小説には詳しくは書かれてなかったように思いますけどー、納得です。
今回見たオペラでは、椿をモチーフにしたと思われる黒い花がでっかくお股の所についてましたね。邪魔そうなくらいでっかかったな笑
オペラ前の食事、マエストロ
新国立劇場にはレストランもあります。
ここでゆっくりしてからオペラを見たり、オペラ後の余韻に浸るのも気分が上がっていいかも?演目によっては幕間メニューもあるらしいですよ!
お味は普通です!夜の幕前メニューはコースしかないみたいですね。デザートも一種だけでした。
でも気分をあげるにはいいですね(^^)
今度はカフェを利用しみようかな。
以上、色々書きましたが、とにかく面白かったという事です!
長文お付き合いありがとうございました!